活動報告

【市政報告10号記事①】学校における働き方の推進

投稿日 2021年8月14日

【質問 1回目】

 近年、働き方改革が叫ばれて久しいですが、企業を含めた労働法制全体では、平成28年9月から、働き方改革実現会議において、長時間労働の是正も含めた働き方改革について議論が開始され、平成29年3月に働き方改革実行計画が策定されました。

 また、国会での審議を経て、平成30年7月に働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律、いわゆる働き方改革推進法が公布されました。この法律は働き方改革を総合的に推進するために、長時間労働の是正等のための措置を講ずるものですが、学校における働き方改革では、この働き方改革推進法を踏まえつつ、教員のこれまでの働き方を見直し、子どもたちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになること、それが目的とされています。

 さらに、日本の学校のあり方自体についても考えてみる必要がございます。諸外国の教員の業務は、主に教科指導に特化していますが、日本は教科指導に加え、生徒指導、部活動指導などを学校が一体的に行うことが求められています。加えて、日本の学校は地域社会の核として、地域コミュニティにおいても重要な役割を果たしています。
このように日本の学校はさまざまな機能を担っており、子どもたちや家庭の抱える昨今の課題とともに、学校現場が抱える課題は複雑化、多様化しております。

 私はこのような中で、高槻市においても学校における働き方の現状を正確に捉え、その状況に対してしっかりと意識を向けて取り組みを進めるべきだと考えています。なぜなら、教員の負担を減らすことで、教員の日々の生活の質や教職人生を豊かにすることはもちろんのこと、一人一人の子どもたちに向き合う十分な時間を確保し、教育の質を向上させることができるからです。以上のような時代の流れを踏まえまして、今回は高槻市でも学校における働き方改革に、より一層取り組んでいただきたいと考え、一般質問をすることにしました。

 そこで、1問目として、学校、特に教員の働き方の現状について、2点お伺いします。

 1点目として、教員の働き方改革が国からも求められていますが、その背景や状況について改めてお答えください。

 2点目として、本市における教員の勤務実態についてもお答えください。

【答弁 1回目】

 教員の働き方改革についての2点のご質問にご答弁申し上げます。

 1点目の教員の働き方改革における背景についてですが、情報化やグローバル化、家族形態の変容等により社会状況が急激に変化する中で、家庭や地域からの学校への期待の増大や学校が抱える課題が複雑化、多様化し、学校や教員が担う役割が拡大せざるを得ない状況になっております。

 また、来年度から小学校において全面実施となる新学習指導要領では、小学校中・高学年の標準授業時数が週1時間相当増加いたします。本市においても新しい教科への対応や生徒指導、部活動、保護者や地域との連携など、学校や教員が担うべき業務の範囲が拡大しており、それらに加えて、教材研究や事務処理等の業務が長時間労働という形であらわれており、教員の働き方改革の推進が急務であると捉えております。

 2点目の本市における教員の勤務の実態についてですが、平成28年度文部科学省が実施した教員勤務実態調査における小中学校の教員の勤務時間は、10年前と比較して全ての職種において増加していると示されており、1週間当たりの勤務時間が長時間に及ぶものが多いことなど、本市においても同様の傾向があり、看過できない状況にあると考えております。

【質問 2回目】

 答弁より、本市においても、来年度からの授業時間数が週1時間増加することに加え、生徒指導や、保護者や地域との連携など、学校や教員が担うべき業務の範囲が拡大していること、加えて、教材研究や事務処理等の業務が長時間労働につながっており、教員の働き方改革の推進が求められていることがわかりました。

 実際に、平成28年度に文部科学省が実施した教員勤務実態調査の結果によると、10年前と比べて勤務時間が増加していることも示されており、約3割の小学校教員、約6割の中学校教員が過労死ラインと言われる月80時間を超えるような時間外勤務を行っている実態が浮き彫りになりました。答弁にもあったとおり、まさに看過できる状況ではございません。

 国でもこの状況を放置しているわけではなく、中央教育審議会で議論が重ねられ、平成31年1月25日に学校における働き方改革に関する答申が出されました。その中では多岐にわたる具体的な改善施策が提示されていまして、それらの取り組みによる在校等時間の縮減の目安が示されています。さらに、文部科学省が実施する「教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査」においても、全国の市町村がどのような取り組みを進めているのかが一覧にされており、毎年更新されています。

 このように、文部科学省や都道府県教育委員会はもちろんのこと、市町村教育委員会の役割が重要とされており、高槻市教育委員会の働き方改革に関する取り組みが期待されるところでございます。

 そこで質問ですが、本市においても、学校における働き方改革について、さまざまな取り組みをされてきていると思いますが、それらの取り組みと効果についてお示しください。

 また、先ほどの答申で示された具体的な改善施策の中に、統合型校務支援システムの活用についても提言されています。本市においても、これまで具体的な検討がされてきましたが、いまだ導入には至っていません。これまでもさまざまな機会を捉えて、校務支援システムの導入に向けた提案をしてまいりましたが、学校における働き方改革の重要な取り組みの一つでもありますので、本市においても早期の導入を実現していただきたいと考えています。
 そこでお伺いしますが、これまでも導入に向けた検討を進めていただいていますが、改めて統合型校務支援システムを導入することによる効果についてお答えください。加えて、全国及び大阪府下の中核市における導入状況についてもお答えください。

【答弁 2回目】

 働き方改革における取り組みとその効果についてですが、本市では平成29年度から、市立小中学校において毎週水曜日を一斉退校日とし、19時には全教職員が帰宅するよう全校で取り組んでおります。また、平成30年9月には、高槻市中学校部活動ガイドラインの策定により、休養日や活動時間を設定し、さらに令和元年11月からは自動応答電話を導入し、夜間の電話を音声ガイダンスにより自動応答電話対応にしております。これらの取り組みを通じて、教職員の働き方改革を進めているところでございます。

 このような取り組みを進めてきたことで、平成31年4月における教職員の時間外在校時間は、平成29年4月と比較して、小学校では平均で約7.5時間、中学校では約7時間減少しております。今後も働き方改革に向けて取り組みを一層推進していく考えでございます。

 2点目の校務支援システム導入の効果についてですが、成績処理や名簿作成、通知表や指導要録等の公簿作成の際、児童生徒の学籍情報や成績データをシステム上であわせて処理することにより、業務の効率化が図られるものでございます。
ほかの自治体の実践例では、システムを導入することにより、教員の時間外在校時間が1日当たり56分削減されたという報告もございます。教員は児童生徒の下校後に翌日の授業準備や事務作業等をしなければならないため、この56分の削減は大きな業務負担軽減となり、教員の働き方改革につながるものと考えております。

 3点目の全国及び大阪府下の中核市における導入状況についてですが、文部科学省がまとめた平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果では、全国の中核市58市のうち、44市が校務支援システムを導入しております。大阪府下の中核市では、6市のうち4市が導入しております。

【意見・要望】

 高槻市では自動応答電話の導入や部活動ガイドラインの策定により働き方改革を進めてきており、平成29年と平成31年の4月時点の比較で時間外在校時間が月で7時間ほど減少したようです。高槻市教育委員会も力を入れて働き方改革に取り組んでこられた結果でありますし、引き続き、この取り組みを進めていただきたいと思います。

 そこで、幾つか要望がございます。

 まずは、学校に対する業務改善方針や計画の策定を進めていただきたいということです。文部科学省が実施した「教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査」によれば、所管する学校に対する業務改善方針・計画等について、策定していると回答した教育委員会が、都道府県で91.5%、指定都市で85%、市区町村で20.8%となっています。具体的な取り組みを市全体で進めるためにも、高槻市教育委員会の考え方を各学校や教員に示す意味でも、学校における働き方改革推進計画のようなものを策定し、全体計画を示す中で、一つ一つ働き方改革を進めていくべきです。市町村でも徐々に策定が進められていますので、本市においても早期に策定していただきますようお願いいたします。

 次に、令和2年度の文部科学省の概算要求を見ていますと、さまざまな予算要求がなされていました。その中で、学校現場における教師以外の人材の参画、それに対する取り組み支援の予算が多数要望されていました。教師に加えて、学校教育活動を支援する人材の配置や、教師がより児童生徒への指導や教材研究等に注力できるように、事務作業を支援する業務アシスタントスタッフの配置など、教師と多様な人材の連携により、働き方改革はもとより、学校教育活動の充実につながるものを計画されていましたので、非常に期待されるものです。国の動向を見つつ、こうした国の予算の活用を見据えて、引き続きアンテナを張って検討を進めていただくようお願いいたします。

 次に、校務支援システムについてですが、成績処理などの事務作業の効率化が図られるものであり、他自治体では1日当たり約56分もの時間外在校時間が削減されたという報告もあるようです。中央教育審議会の答申内でも、目安として、校務支援システムの導入で年間120時間の在校時間削減につながることが示されています。
 また、中核市では、全国58市のうち44市が導入済みで、大阪府下では6市のうち、ことし4月に中核市になった寝屋川市と、高槻市以外で既に導入済みであるようです。5GやAI、IoTなど、一層の技術革新が到来しているこのICT時代において、高槻市が校務支援システムを導入しないということは考えにくいのではないかと思います。ある意味、先進自治体の成功事例と失敗事例を参考に、高槻市はよりよい機能を集めた校務支援システムを構築できるとも言えますので、いよいよ導入のタイミングが来ているのではないでしょうか。

 さらに、学校には多くのデータが眠っています。それらを正確にデータベース化することで、EBPM、いわゆるエビデンスに基づく政策形成を教育現場でも実現することができるようになります。「学びと育ち研究所」という自治体シンクタンクを持つ尼崎では、さらなる活用に向けて校務支援システムの全面的なリニューアルを今行っておりますし、箕面市では、校務支援システムを活用して、児童生徒の一人一人の個人データを追いかけることで成績の経年変化を追いかけたり、各教員の指導結果を客観的に評価して、指導力向上につなげたりと、データをもとにして教育の質向上に取り組んでいます
 これからの時代はデータの時代です。客観的なデータがないと正確な議論も効果的な施策も実現できません。その根幹となる統合型校務支援システムの導入を高槻市でも実現することで、高槻市の教育の質をより一層向上させることができるはずです。

 また、働き方改革を進める上で、勤務実態の把握をするためにも、勤務時間を自己申告方式ではなく、システムで正確に把握する仕組みを高槻市においても導入していただきたいと思います。行政職員は既にシステムで管理されておりますので、教職員についても同じくシステムで正確に管理するべきです。出退勤管理システムについては、校務支援システムと一緒に導入することでより効果が高められますので、働き方改革の観点からも、セットでの導入をご検討ください。

 校務支援システムの早期の導入は必ず実現していただきたいと考えています。その上でしっかりと他市の事例を学んでいただき、管理システムとしてただ使うだけではなく、教育の質向上につなげられるような企画のもとでの導入を検討していただくことをお願いいたします。

※令和元年第5回定例会(12月16日)議事録より引用

ページの先頭へ