活動報告

エビデンスベースドが行政を変える?

投稿日 2016年9月1日

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先日行われた「平成28年度高槻市地域防災訓練」に参加してきました。
訓練用に作ったビルからの救出訓練やドクターヘリの出動など、なかなか本格的な防災訓練でした。

本題ですが、先日グロービス経営大学院で開催された【本質を見抜く分析力~「『学力』の経済学」著者・中室牧子氏をお迎えして~】に参加してきました。
中室さんの著書である「『学力』の経済学」は、すでに読破しており大変興味深かった本です。

勉強会では、経済学から教育政策をひもとく「教育経済学」について、様々な事例に基いての具体的な話が多々あり、その考え方は高槻市でも活かしていけそう、というか、必ず活かさなければならないと思いました。(行政はどうしても数字に基いての政策判断がなされないので、即導入は難しいでのが現状ですが・・・。)

最後の質疑応答の時間で「なぜエビデンスを重視しなければならないのですか?」という質問に対して、「リソースが限られているからです」は、一見当たり前のことですが、本当に明快で秀逸でした。

では、特に重要だと思ったことについて、ポイントを絞ってお知らせします。

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■教育政策の問題点
・「わたし」の経験による支配がなさてている
→個人の経験は全体の話ではない。例外的な出来事ほど衆目を集めている。

■アメリカの教育政策
・2000年のブッシュ政権時に成立した「落ちこぼれ防止法」において、「科学的な調査研究」という言葉が111回も使われている。
・教育政策に「科学的根拠」を強く求めており、エビデンスのない政策には予算をつけない。
・教育の効果測定には「社会実験」を行うことが必要であり、世界的にも一般的になっている。
・政策はどうしても政治的流行に振り回されやすい。だからこそ科学的根拠に基づく政策判断をおこなう(エビデンスベースド)。

■エビデンスとは
①数字で計測できる
②「因果関係」が明らかである → 相関関係とは違う。鶏と卵をはっきりさせる。
③「階層」がある → ランダム化比較試験が最も信用度が高い

■因果関係
・よく「読書をすれば学力があがる」と言われるが、「学力が高い子が読書を好む」という可能性については話がされない。
・因果関係がはっきりしていない中で、政策判断をすると、逆に「本を増やすことで、学力格差が広がる」可能性がある。
・だからこそ、エビデンスに基づいた政策判断が必要。正しく予算を使うため。

■幼児教育の効果
・幼児教育は費用対効果が非常に高い。4歳時の100円の投資が、65歳時点で6,000円~30,000円の内部収益率。
・IQや学力などの認知能力は、幼児教育に投資を行った児童と行っていない児童とでは8歳時点でほぼ差がなくなる。
→認知能力への効果は限定的である。
・一方、忍耐力や自制心などの非認知能力は差が埋まりにくい。

■どういう非認知能力が重要なのか
・「可鍛性があること」+「将来の成功につながること」
→①自制心 ②やり抜く力(GRIT)
・日本においても、「しつけを受けた人は収入が高い」という実験結果も出ている。
・日本のデータを用いて、中・高校生の時に培われた勤勉性、協調性、リーダーシップなどが学歴、雇用、収入に影響することを明らかにした分析もある。

■日本において、エビデンスベースドを広げていくためには
・まずは小規模でパイロットテストを行い、データをとり、効果の高い政策を大規模に広げていく。

■エビデンスを重視するのはなぜか
・リソースが限られているから。現在は教育政策が「投資」になっていない。

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行政において、エビデンスに基づいた政策判断がなかなかなされていないことがこの1年間で強く感じているところです。

行政はアンケートをよくやっているのですが、仮説を立ててデータを集めていないので、使えるデータが少なかったり、そもそもアンケートをとりっぱなしになっていたり。
また、政策を開始するときに何かしらデータを出してくるのですが、「都合よくデータを切り取ればそうですけど…」という内容が多かったり、他の事実による影響を無視したり。

「データ分析課」がいますぐに必要だとは言いませんが、教育政策以外でも、もう少し「科学的根拠」=「エビデンス」に基づいた政策判断を行うように求めていきたいと思います。

人口減少・少子高齢化がすすみ、さらに予算(リソース)に限りが出てきている日本の自治体だからこそ、エビデンスベースドが行政を変えるきっかけにしなければいけないと考えています。

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