活動報告

【続き】一般質問『政策形成能力を高める組織づくりについて』/2問目・要望

投稿日 2017年7月3日

昨日は選挙デーでしたね。話題になったところでは東京都議会議員選挙と兵庫県知事選挙の投票日でした。

東京都議選では、小池百合子知事率いる都民ファーストの会が55議席獲得し、第一党になりました。
2011年の大阪維新の会を彷彿とさせる圧勝劇でしたが、首長と議会の両輪をとった都民ファーストの会が、二元代表制とのバランスを取りつつどのような政治を行なっていくのか注目しています。

改革のスピード感にはおおいに期待できますが、数で押しすぎるとのちに遺恨を残してしまうでしょう。
「議院内閣制の国政」と「二元代表制の地方政治」における議会のあり方の違いを強く再認識して、改革に取り組んでもらいたいです。

ということで本題。先日の一般質問報告の続きです。


↑都合のいい写真がなかったので、前回の別ショットです。。

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◆質問◆2問目

 2問目は、職員個人と自治体組織、それぞれの政策形成能力の向上に向けての取り組みについて質問いたします。

 まず、職員個人の政策形成能力の向上に向けた取り組みについてです。管理職だけでなく一般職から政策形成能力向上に向けた研修を行い、さらに人事評価の要素としているということで、本市が政策形成能力を職員に広く求めていることは理解いたしました。一方で、職員提案制度については、さらなる職員の政策形成能力向上につなげる改善ができるのではないかと考えています。

 事前にこの制度の現状を確認したところ、提案された企画の中から研究・検討するべきだと判断されたものについては所管部局に渡されているようですが、それは政策経営室と所管部局の間のやり取りであって、企画を提出した職員に対しては、その企画に対する評価やフィードバックがされていないようです。せっかく忙しい業務の間に考えて提案した企画が、どのように評価され、どの部分をもっと詳細に調査研究しなければいけないのかがわからなければ、職員の能力向上にはつながりませんし、企画内容をより精度の高いものにしようとする意欲も沸きません。

 職員の企画力向上と市民サービス向上につなげるために、企画の評価やフィードバックを職員本人に返したり、提案された企画の中から優秀なものを表彰して庁内で公表したり、人事課の政策形成能力の研修と連動した制度設計にしたりと、様々な改善策が考えられます。

【2-1】
 そこで質問ですが、より制度の目的に沿った職員提案制度に向けて、この制度の改善を検討するべきだと考えますが、見解をお答えください。

 

 次に、組織としての政策形成能力の向上に向けた取り組みについてです。

 1問目に対する答弁では、ビッグデータ活用についての具体的な答弁はありませんでしたが、要は、どのようなデータにしても、各所管部局それぞれでデータ収集から分析、効果検証まで行い、政策立案に活かしているということでした。このような統計機構を「分散型」と言いますが、分野ごとの専門性を活かすことができる一方、縦割りの弊害が生まれ、各統計の重複や統計体系上の欠落を招きやすいとされています。逆に、分散型に対して「集中型」と呼ばれる統計機構は、統計の専門性を発揮しやすく、統計体系の整合性が図りやすい一方、分野ごとの専門知識が活かしにくいとされています。

 こうした状況を踏まえ、政府では統計機構の改革が議論され、関係閣僚や有識者で構成される統計改革推進会議の最終とりまとめ案が本年5月19日に発表されました。この最終とりまとめ案にもあるとおり、分散型・集中型の両方の良いところを取り入れたバランスの良い新たな統計機構の構築が自治体においても必要ではないでしょうか。具体的には、目の前の仕事が山積している原課に調査研究を任せてしまうのではなく、全庁的に統計体系を整え、統計の質を担保するために、専門的な知見を持つ組織を自治体でも持つべきだと考えています。

 そこで、このような調査研究にあたる統計機構の課題を解決する手段として、全国的にも広まりつつある「自治体シンクタンク」をご提案いたします。

 シンクタンクというと民間のものが思い浮かびますが、この自治体シンクタンクは自治体組織内に設置し、自治体職員が主な研究員となり、あわせて大学教授や非常勤の専門研究員などと組織を構成します。民間シンクタンクやコンサルタント会社と違い、自治体職員が主な研究員として活動しているため、当事者意識が強いことや政策実施の現場を持っていることから、政策反映性や政策実現性の高い調査研究が可能だと言われています。
 自治体シンクタンクの機能としては、全庁的な課題や中長期的な課題を調査研究する「政策研究機能」、各部局に対して調査研究のノウハウを助言し事業化を支援する「政策形成支援機能」、市政全般に関わるデータの収集や整理、活用促進を促す「データ蓄積・活用促進機能」などが主なものです。

 このような調査研究の専門性を持つ自治体シンクタンクを持つことは、高槻市役所全体の政策形成能力が強化されることにつながります。また、1問目で確認いたしましたが、企画や計画に関するコンサルタント会社への外部委託が年間十数件で、約1億円使っているものが、内部の自治体シンクタンクに委託することが可能になります。研究員として働く市役所職員の政策形成の経験になるため、そのノウハウを市役所に蓄積することができますし、性質によっては内製化できないものありますが、年間1億円ほどの外部委託費を減らすこともできます。
 以上のような自治体シンクタンクの効果を狙って、近隣では豊中市や草津市、全国では横須賀市や町田市、松戸市など、40ほどの自治体シンクタンクが設置されています。そこでこれらに関して2点質問いたします。

【2-2】
 自治体シンクタンクが全国的に広がっていることや組織設置による効果への見解についてお答えください。また、本市でも自治体シンクタンクの設置の検討を始めるべきだと考えますが、本市の見解をお答えください。

【2-3】
 2点目ですが、自治体シンクタンクは政策形成能力を高める手段の1つでありますので、大切なことは、自治体シンクタンクが持つような機能が自治体に求められているという現実への対応です。全庁的な課題やまだ強く認識されていない中長期的な課題の調査研究機能、各部局の施策に対する支援機能など、自治体シンクタンクを設置せずとも、例えば政策経営室がその機能を担うことでも解決できます。こうした機能を本市でも持つべきだと考えますがいかがでしょうか。

 

 次に、ビッグデータなどの自治体が持つデータの分析や活用について伺います。

 近年ビッグデータの活用が企業や行政において強く叫ばれる中、データサイエンティストという職業が注目を浴びています。データサイエンティストとは、ビッグデータを活用し、大量のデータを分析、それをマーケティング等に活かして価値を生み出す役割を持った専門人材のことです。
 実際に、政府においてはデータサイエンティストの育成に力を入れ始めています。内閣総理大臣などで構成される未来投資会議から、先日6月9日に発表された「未来投資戦略2017(案)」において、データサイエンティストの育成について記載がされました。また、総務省統計局がオンライン講座を開講し、データサイエンティストの育成を始めています。

 自治体シンクタンクの設置のように組織を大幅に変更するためには、充分に検討をする必要がありますが、データサイエンティストのような専門性の高い人材を育成・採用することは機構改革の必要もなく始められることであり、高槻市の組織としての調査研究能力の向上につながるはずです。そこで、数点質問いたします。

【2-4】
 データサイエンティストのようなデータ分析に関する専門的な人材の地方自治体における可能性についての見解をお答えください。

【2-5】
 地方創生の時代においてRESASをはじめとして、ビッグデータの有効活用が必要とされてきています。自治体が持つ貴重なビッグデータを正確に分析する人材育成のために、総務省統計局が開催している統計研修への職員の派遣やオンライン講座を受講させている職員は現在おられるのでしょうか。また、もし取り組んでいないとすれば、今後そうした専門的な知識を持つ人材を職員の中で育成する考えはあるのか、お答えください。

【2-6】
 また、職員の育成を図ることに加え、データ分析の専門職員を採用することも1つの効果的な手段だと考えますが、そのような専門職員を採用することを検討されないのか、お答えください。

 

 2問目の最後に、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/確かな根拠に基づく政策立案)の推進について伺います。

 このエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングにおけるエビデンスとは「ある政策が、その目標とする指標(アウトカム)に影響を与えた因果関係」のことを指します。ここで大切なのは、相関関係ではなく、原因と結果がはっきりしている因果関係であることです。
 地方創生が叫ばれるようになってから、その「エビデンスに基づく政策立案」が地方自治体においても強く求められるようになりました。政府のほうではこの動きが本格化してきており、先程申し上げました統計改革推進会議の最終とりまとめ案の中で、エビデンスに基づく政策立案推進体制の構築と統計改革がうたわれました。この内容は今後地方自治体にも必ず影響してくるものだと考えています。

【2-7】
 そこで質問ですが、国ではエビデンスに基づく政策立案の推進が議論されていますが、その背景についてお答えください。また、高槻市への影響はどういったものが想定されるのかお答えください。

 以上、2問目になります。

 

◆答弁◆2問目

 職員提案制度については、これまでもより一層の制度の充実を図るため、数度の見直しを行ってきました。現在は、業務改善や革新的な提案のほか、庁内における改善、改革意識の醸成を図ることを目的とした改善報告についても募集しており、効果の大きい報告は庁内で公表し、各部局での業務改善につなげています。
 今回、新たに募集した革新的な提案についても、その検討状況を提案者へのフィードバックや庁内での公表などを行う予定としています。今後とも、より効果の高い制度となるよう改善に努めてまいります。

 2点目から3点目の自治体シンクタンクに関するお尋ねですが、国等からの権限移譲が進むなど地方分権が進展するとともに、地方創生に向けた取組が本格的に進められる中、地方自治体の創意工夫したまちづくりが、これまで以上に求められております。このような背景の中、基礎自治体を設置主体とする、いわゆる「自治体シンクタンク」の設置が複数行われているものと認識しております。
 この「自治体シンクタンク」の設置については、自治体によって設置手法も様々であることから、その効果も異なることと思いますが、担うべき役割を鑑みると、より精度の高い政策立案に寄与するものと考えます。
 少子高齢化の進行など自治体の行財政運営を取り巻く環境が厳しさを増す中、本市の特長をいかした魅力あるまちづくりを進めるためには、組織として今まで以上に高い政策立案力が求められると認識しており、その実現に向け、先進事例も含め、様々な角度から研究していくことが必要と考えております。

 ビックデータ等の活用にあたっての、人材育成や採用に関するご質問でございますが、地方自治体におけるビックデータ等の有効活用につきましては、現在総務省を中心にデータを有効活用できる人材の育成などについて、取組みが始まったところでございます。今年度中に、大阪府が主催する実務的なデータ活用の研究会が実施される予定であり、本市からも統計担当職員を派遣することとしております。
 今後も、人材育成の方向としては、これらの研修や総務省が行うオンライン講座などを通じて、職員のデータ活用のスキルを向上させていきたいと考えているところです。また、専門職などの採用については、今後、データ活用の取組みが進む中で、検討されるべきものであると考えております。

 総務省に設置された「統計改革推進会議」の最終取りまとめによりますと、我が国では欧米諸国に比べ、政府の政策立案において、統計や業務データなどが充分には活用されず、限られた経験等に基づく政策立案が行われているとの指摘があるとされております。我が国の社会経済構造が急激に変化する中、限られた資源を有効に活用し、国民により信頼される行政を展開するためには、政策部門が統計等を積極的に利用して、証拠に基づく政策立案を推進する必要があるとの認識の下、議論されているものでございます。
 この中では、統計システムの再構築と利活用促進が掲げられているため、本市にとりましても、国等の統計資料を柔軟に提供が受けられる等、統計資料を利活用しやすい環境整備が図られるとともに、その分析等の能力向上を図る必要があると認識しております。

 

◆意見・要望◆

 3問目は意見・要望とさせていただきます。

 まず、職員提案制度については、取り組み自体は非常に良いものだと思っておりますので、この制度を行政運営や市民サービスの向上につなげることはもとより、職員の政策形成能力向上につながるよう、人事課とも連携しながら引き続き改善に努めていただくようよろしくお願いいたします。

 また、自治体シンクタンクの設置については、期待できる効果や必要性をご認識いただいているようです。自治体シンクタンクを設置している自治体では、その研究結果や実際の政策に活かした事例などを報告書にまとめてホームページ上で公表されていますので、それらを参考に、ぜひ具体的に研究を進めていただくようお願いいたします。

 次に、データ分析に関する専門性を持った職員の育成については、オンライン講座や研究会を通して、職員の育成を図っていくということでしたので、こちらについてもぜひともよろしくお願いします。統計チームの職員の方はもちろんですが、政策形成に関わる職員であれば基礎的に持っておくべき能力だと思いますので、各部局でしっかり育成が図られるよう、人事課のほうで講座受講や研究会への派遣を主導していただきたいと思います。
 また、採用については今後検討されるべきものということでしたが、データの分析や活用に向けての体制を整えていく中で、必要に応じてそうした人材の確保もご検討ください。

 最後に、エビデンスに基づく政策立案の推進に関しては、国の動きと本市への影響については理解いたしました。最終取りまとめ案では、2020年度から地方自治体の統計機構の見直しや高度化について本格的に取り組むことが明記されています。エビデンスに基づく政策立案や統計機構の強化を自治体に求められる時代が、近い将来必ずやってきますが、国から指示されてから取り組むのではなく、自治体自身の問題意識や強い意思によって取り組みを始めておくべきではないでしょうか。

 今回の質問の中で、ご提案させていただいた、自治体シンクタンクの設置や、データ分析に関する専門職員の育成や採用、エビデンスに基づく政策立案の推進などは、すべて高槻市の政策形成能力の向上に向けたものでありますが、正直他の自治体を先行するような施策ばかりであり、すぐに取り組みを始めます、とは言いづらいものであることは理解しております。ですが、社会情勢や自治体の役割の変化を敏感に感じ取り、具体的な課題として認識し、解決に向けて取り組む自治体こそが、これからの地方分権、地方創生の時代を乗り越えられると私は確信しています。なぜならデータ分析体制や政策形成能力を強化することができれば、特定の施策だけでなく、子育て、健康福祉、シティプロモーションなど、あらゆる行政分野においての調査研究の底上げになり、住民ニーズに十分に応えられる政策立案が可能になるからです。

 今年度、尼崎市では、「学びと育ち研究所」という自治体シンクタンクが設置されました。数値で図りにくいと言われている教育分野に、エビデンスに基づく政策立案を持ち込んだもので、非常に注目を浴びています。このような時代の流れにあわせたフットワークの軽さ、といいますか、国や他の自治体の動きに歩調をあわせるだけなく、自治体自らの意思で模索しながら、先進的に取り組んでいく姿勢は、本市も参考にするべきものだと思います。

 また、我々地方自治体に関わる人間が絶対に忘れてはならないのは、地方自治体が政策実施に使っている財源は、基本的にすべて「税金」であるということです。民間企業であれば、自分たちで稼いだお金をどのように使うかはその企業の自由であります。一方、地方自治体は、地方自治法第2条14項にあるように「住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とされています。つまり、住民のみなさまから預かる税金を使って政策を実施していく上では、その政策が「本当に」最大の効果を生むものなのか、十二分に検証されたものでなければならないはずです。その地方自治体の本来の在り方に立ち返るためにも、今回ご提案させていただいたような施策が地方自治体には必要だと考えています。

 本市においては、今年度の施政方針の中で「真に必要な事業は何かを見極めた上での投資もおこたってはならない」と示されました。まさに、地方自治体の本来の在り方に立ち返り、真に必要な事業が何かを見極めるためにも、エビデンスを導き出すためのデータ分析体制の確立が必須になるのではないでしょうか。

 みらい創生への歩みをさらに強く、そして確実に効果をあげながら進めていくためにも、濱田市長のみらい創生への覚悟とリーダーシップによって、精度の高い政策形成を実現できる自治体組織への改革に取り組んでいただくことをおおいに期待いたしまして、一般質問を終わります。

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